道は、必ずひらける。

WAYS Your dreams, Woven together.

Produce by 朝日インテック

WAYS 道を拓く Interview 道を拓く Interview vol.1 株式会社FUJI MAY 20, 2022

株式会社FUJI
株式会社FUJI

スマートフォンをはじめとする通信機器や家電製品など、さまざまな電気製品に欠かせない電子基板。製品の心臓部であるこの基板に、チップやICなど多くの電子部品を装着するのがFUJIの主力製品である電子部品実装ロボットだ。世界トップクラスのシェアを誇り、世界中の生産現場を支える実装ロボットを生み出したFUJIの先進技術。近年はロボット技術を軸に、時代をとらえながら、医療や介護分野でも革新的な道を切り拓いている。

今回は、カテーテル治療分野において、朝日インテックとともに「エコーガイドロボット」の開発を進める、株式会社FUJIの曽我会長と藤田開発センター長に、“ものづくり”の源となる信念や共同開発プロジェクトへの想いを聞いた。

INDEX

「innovative spirit」を根幹に
革新的な製品を世界へ送り出す

株式会社 FUJI

「WAYS」という言葉が表す「道」や「信念」。FUJIの信念とも言える、ものづくりの源として大切にされているコーポレートメッセージ「innovative spirit」についてお聞かせください。

曽我 : FUJIの社訓を凝縮し、ひと言で表したものが「innovative spirit」です。「我々は需要家の信頼に応え たゆまぬ研究開発に努め 最高の技術を提供する」――この社訓には当社の強い想いである「誠心」も込められています。世の中に新しい価値を創造し、提供していくことがまさに「innovative spirit」。ものづくりを通して豊かな社会の実現を目指している当社のメッセージであり、この言葉が私たちの誇り、原動力にもなっています。

藤田 : この創業から変わらない精神は、FUJIの主力製品はもちろんですが、現在開発センターで取り組んでいる新しい製品にもしっかりと息づいています。お客様に感動を与える製品は、これまでに存在しないもの、想像を超えるものでなくてはいけません。私たちは、お客様に驚きをご提供する、まさしくinnovativeな製品の開発に日々取り組んでいます。

創業以来、独自のテクノロジーを進化させ工作機械メーカーとして成長し続けていらっしゃいます。近年はロボティクスなど積極的に応用領域を広げられていますが、あらためてこれまでの成長の歩みや、エポックについてお聞かせください。

曽我 : 1959年に創業し、工作機械メーカーとして順調に成長をしていましたが、世の中の不況もあり徐々に工作機械だけでは立ち行かなくなりました。何か新しいことをと考え、「自動組立機」の分野にチャレンジした結果、商品を包む包装機など100種類以上の組立機を手掛けるようになりました。そのひとつが、大手家電メーカーの音楽プレーヤーに使用する電子基板に電子部品を挿入する機械だったんです。リリースした電子部品自動挿入機「BA」は、性能が良いと大きな反響をいただき、ありがたいことに世界でもヒットしました。このことが、新しい事業を始めるきっかけになりましたね。
しかし、2000年のITバブル崩壊以降、生産設備をはじめさまざまなものが変わり、順調だった会社も時代の潮流に取り残される結果に。「これまでの製品ではなく、新しいものを作らないとだめだ」。ともすれば倒産すらしかねない危機感を、全社員が共有したときでした。危機感があったからこそ、全社員が自分ごととして新しい製品の開発に真剣に取り組み、電子部品実装ロボット「NXT(ネクスト)」(※)を生みだすことができたのです。これが世界シェアのトップにまで成長しました。この「NXT」と先に述べた「BA」こそが、FUJIのこれまでの中で最もエポックメイキングな製品といえるでしょう。

(※)NXT(ネクスト)/モジュールの小型化、高速・高精度化を実現した、FUJIの先進技術を駆使した電子部品実装ロボット。高密度化、極小化する電子基板へ対応するため進化を重ね、2003年の発売以降シリーズ累計10万台以上の出荷を誇る。

社員の皆様に対して、「innovative spirit」という企業風土をどのように浸透、継承されていらっしゃいますか。

曽我 : 社員が心掛けるべき行動指針として、「7つの習慣」を掲げています。「お客様第一」「真摯実直」「改善改革」「現地現物」「当事者意識」「チャレンジ」「まごころ」の7つ。これらは、長い時間をかけて培われてきた、まさに「innovative spirit」を反映させた行動指針です。感動だけでも驚きだけでもなく、両方を兼ね備えたより良い製品やサービス。そういったものをお客様に提供したいという思いを持っています。さまざま事業に取り組んできましたので、新人もベテランも一体となって活発に意見交換し、良いものであればやってみようという精神は息づいてきていますね。「7つの習慣」を指針として、全員が同じ方向へ向き、良い企業にしようと業務にあたっています。

藤田 : 技術開発の新卒社員には、入社後「創開塾」というカリキュラムがあります。そこでは、大学で学んだ専門分野の枠を超え、開発に必要な技術を半年間みっちり学びます。独創性や技術の優位性を徹底的に教わるので、「innovative spirit」のスタートはそこだといえるかもしれません。枠を狭めることなく、ジャンルを問わず対応できるようになるには、あらゆる技術を知ることから。そうすることがinnovativeな製品の開発につながると考えています。

医療とロボットが目指す未来
次世代医療機器
「エコーガイドロボット」

工作機械のノウハウをロボット分野にも応用されていらっしゃいますが、時代の潮流をどのようにとらえていらっしゃいますか。また医療分野への進出については、どのような想いをお持ちでしょうか。

曽我 : デジタル技術によるさまざまな変化で、この先も世の中が変わっていくことは明らかです。目まぐるしい変化の中で、お客さまに喜んでいただける製品を提供するには、大きく仕事の方法も変えていかなければなりません。そして、それが実現したときには大きな喜びを感じるでしょう。FUJIの社員にもワクワクしながら新しいことに挑戦し、自分の成長また会社の成長へつなげていってほしいと願っています。変わることを恐れてほしくない。変化は、挑戦の際にはつきものですから。
新たな医療分野に向けた製品は、世のため人のため、加えて世界中で役に立つ開発であり、そのことが非常に魅力的でした。新しい分野で我々独自の技術が活用でき、世の中に貢献できる、加えて企業の存在意義もより見いだせると、期待でいっぱいです。そして、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、このロボット開発が、感染症と最前線で闘っている医療従事者の方々の手助けになればと思っています。

ロボット開発を通して感じられる医療分野の課題について、お聞かせください。

曽我 : 医療分野には、人間が担う苦しい作業、大きな身体的負担をともなう作業が数多くあります。介護分野も同じです。ロボットを開発し、それを活用していただくことによって医療従事者や介護従事者の負担を軽減したいと思っています。すでに電子部品実装ロボットなどで培った技術を用い、ベッドから車イスなどへの乗り降りといった“移乗”をサポートする介護ロボットも手掛けています。我々の技術を駆使したロボットで、医療・介護・福祉分野にさらに貢献していきたいですね。

朝日インテックとの共同開発プロジェクト「エコーガイドロボット」。本プロジェクトの概要、スタートしたきっかけや経緯をお聞かせください。

藤田 : FUJIでは、「FUJI robots lead the way」というスローガンを掲げ、実装ロボットから介護ロボット、多関節ロボットを手掛けてきました。そして我々の医療分野への進出という次なる想いと、朝日インテックのロボット医療という新しい領域への進出という熱い想いがマッチし、共同開発プロジェクトがスタートしました。
共同開発しているロボットは、患者に直接接触する超音波検査機器の先端部分「超音波プローブ」を支える「エコーガイドロボット」です。カテーテル手術は血管に直径2~3mm程度の管(カテーテル)を挿入し、低侵襲な手術として注目されていますが、目視での確認ができないため、X線や超音波を見ながら行う必要があります。ですが、X線には放射線被ばくの懸念がある一方で、超音波はそのような心配もなく予後も良好だと言われています。
手術の際、これまで超音波プローブは技師の手によって支えられていました。血管の詰まりなどの症状によっては手術が長時間にわたることもあり、技師への負担はかなりのものと聞いています。加えて、医師の求める超音波画像と技師のサポートする画像とをマッチさせるには、技師自身にそれ相応のスキルやテクニックが必要であり、現状なかなか術式が拡充されていません。技師の負荷や人員のリソース不足、そういったさまざまな問題解決を目的として、エコーガイドロボットの開発が始まりました。

朝日インテックとの共同開発プロジェクト「エコーガイドロボット」
朝日インテックとの共同開発プロジェクト「エコーガイドロボット」

プロジェクトの先進性ゆえに、たくさんのご苦労があったとお聞きします。

藤田 : 産業界で培った多関節ロボットを医療分野へ応用するにあたり、未知のことばかりでした。産業界でもロボットのみで作業していくスタイルが主流で、人に寄り添った協働ロボットというのは増えてはいますが、まだまだ成長段階です。ましてや医療分野への応用となると、守るべきルールも定まっていない、また先例の少ない中での実現は非常に難しく、まさにinnovativeな開発でしたね。産業用ロボットを医療の安全規格に合わせること、そして高度な性能も備えること。この「規格」「安全」「高度な性能」という3つを実現することが非常に大変でした。
またオペレーションの点では、産業界での装置操作と、医療界での医師による操作感覚の違いは顕著で、こちらは現在も改善を重ねている部分です。医療規格も満たし、さらに人に寄り添うロボットとしての安全を担保する。これらをクリアにしていくためには、認証機関との綿密な相談が欠かせません。
そうして改良を重ねながら、2021年10月に医療認証を取得しました。今年2月には学会でのライブ手術を終え、2022年度内のリリースを目指し、さらに臨床実績を積み上げていく予定です。おかげ様で実際に使っていただいた医師からも「思い通りに動かせる」と評価をいただいています。 これからさらなる自動化を目指し、またカテーテル手術を要する症例が多いと言われる欧米の医療規格に対応した、ロボット開発も進めていきたいと考えています。

このロボット開発で発揮できたFUJIの強みとは何だと思われますか。

藤田 : 産業の現場では、指差し確認のようなオペレーションが事故防止につながります。しかし、いつ容態が急変するかわからないという医療現場では、そのような確認をしている余裕はありません。人命が関わり、ある程度のスピードが求められる現場では、産業界で培ってきたルールは通用しません。手探りながらも開発を進め、それを実際に医師に確認していただき、すぐに修正、改善していく。このような作業を何度も繰り返し行いながら、開発を進めていきました。innovativeな製品には正解がありません。使っていただく方も未知の部分が多いので、提案して意見を伺い、迅速に修正、改善するという開発工程を繰り返し行っています。これは産業用ロボットでも行ってきたFUJIの姿勢、強みだと言えますね。

共同開発を通じ、朝日インテックについてどのように感じられましたか。

藤田 : 朝日インテックは、カテーテル治療の分野で世界でも高いシェアを誇っています。世界を席巻するほどの強力な製品を持ちながらも、新しいインターベンションロボットの領域へとアグレッシブに進まれている姿は、革新的な開発を目指しているFUJIと通ずるところ。現状に甘んじることなく、チャレンジされていく素晴らしい会社だと思っています。

新しいことへの挑戦と創造で
物心両面の幸せを追求したい

FUJIが考えるサスティナビリティ、そして取り組まれていることについてお聞かせください。

曽我 : 国連が掲げるSDGs17の目標。地球の未来の理想を掲げている国際社会共通の課題の解決に向けて、当社も全力で取り組んでいます。
持続可能な社会を実現するためには、社員が誇りを持てるような事業や商品であることが大切だと考えています。誇りが持てるということは、社会や環境、そして人に対しても良いものであるはずです。「物心両面」であることが重要で、物で栄えて心が滅びてはいけません。心が豊かになるような商品を世界中に提供したい。そしてこれは技術開発に限ったことではありません。
特に象徴的なのが、地域貢献の一環として開設した複合施設「THANK(サンク)」です。FUJIの本社がある知立市が東海道五十三次の39番目の宿場町であったことと、地域への「THANK(感謝)」から名づけられたこの施設。斬新な外観の建物のなかには、グローバルなものづくりの企業であるという特徴を活かして、地域児童向けに科学などのカリキュラムを通して英語を教える「teracoya THANK」と、地域の憩いの場となるカフェ「thirty nine café」が併設されています。
世界で通用するためには英語が話せるだけではなく、強い好奇心をもち、自分の頭でものを考えられることが大切です。そういう人を育てていきたいという強い気持ちのもと、「teracoya THANK」では実験を取り入れながら英語で科学を教えています。近年は理系離れが進んでいると言われていますが、科学の面白さを知ってもらい、将来のものづくりの力にもつなげられたらと考えています。実際、臆することなく英語で科学に触れている子どもたちの姿を見ると感動しますね。年齢の違う子どもたちが切磋琢磨しながら学ぶ寺子屋的な教育が大切だと考え、これからも、よりいっそう地域貢献にも人材育成にもつながる取り組みを拡充していきたいと思っています。

これまで、多くの想像を超える製品やサービスを生み出してこられました。最後に、FUJIが目指す未来の姿についてお聞かせください。

曽我 : 先ほども言いましたが、我々は「物心両面」で良い製品、サービス、あるいは考え方を提供する責任があると考えています。当社の経営理念の礎にもなっている、売り手によし、買い手によし、世間によしという「三方よし」の精神は、まさにSDGsにも通じるものです。
また事業に携わっている限り、社員が成長を実感でき、誇りをもって働ける企業でなければなりません。そうであり続ければ、確実に世の中のためになる商品やサービスを提供できますし、会社の成長にもつながることでしょう。単に利益の追求を目標とせず、世界中の人々が幸せになる未来のために、常に新しい価値の創造に挑戦し続けたいですね。

取材・文=鬼頭英治(エディマート)/
写真=太田昌宏(スタジオアッシュ)

株式会社FUJI

世界トップクラスのシェアを誇る電子部品実装ロボットと、世界中のものづくりの現場を支える工作機械の2つの事業を中心に展開。自社で技術開発から製品製造、販売、アフターサービスまでを担う。また、社内で培ったロボット技術を応用して、介護ロボット・宅配ロッカーシステム・多関節ロボットなど新しい領域にも積極的に挑戦。自社の技術力を磨き上げながら、社会課題の解決や、サステナブルな社会の実現に貢献している。

https://www.fuji.co.jp/
株式会社FUJI 代表取締役会長  曽我 信之

株式会社FUJI 
代表取締役会長

曽我 信之NOBUYUKI SOGA

1975年4月富士機械製造株式会社入社。主に生産管理、事業企画部門を担当し、1997年経営企画室長、2007年取締役執行役員、2008年取締役常務執行役員、2009年代表取締役社長、2019年代表取締役会長に就任し現在に至る。一般社団法人日本ロボット工業会理事、一般社団法人日本工作機械工業会理事も務める。

株式会社FUJI 開発センター長・技術部部長 藤田 政利

株式会社FUJI 
開発センター長・技術部部長

藤田 政利MASATOSHI FUJITA

1997年10月富士機械製造株式会社入社。主に電子部品実装ロボットの高速、高精度化のための制振制御、高剛性設計を担当。2004年開発センター所属後、新規事業の開発、既存事業の要素技術開発に従事。2016年小型多関節ロボット「SmartWing」の開発プロジェクトリーダー。その後、「エコーガイドロボット」の開発責任者。2021年開発センター長に就任し、現在に至る。市村産業賞 功績賞受賞。技術士(機械部門)。

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